第5節 - 項充

第2巻 第2章 第5節

この節の概要

水陸両用部隊を率いる項充は、童猛とともに南方の隠れた入江から陸に上がり、新兵の初期調練拠点である洞宮山の集落を訪れる。そこでは杜興、扈三娘、顧大嫂らが二千四百名におよぶ新兵の受け入れと育成を行っており、項充は連れていく一千名の適性を見極めつつ、兵を動かすための心理や戦友への思いを語り合う。翌朝、一千の新兵とともに大型船で新たな大拠点である洞庭山へと移動する道中、項充は童猛と水底に眠る亡き兄弟や仲間の面影について静かに言葉を交わす。洞庭山に到着後、新兵を営舎へ届けて覆面姿の宣賛と面談した項充は、全般的な調練の指揮と自らの部隊の更なる強化を指示される。将兵たちの様々な思いを胸に抱きながら、項充は潜水部隊の訓練を進める張敬のもとへ向かい、自らも冷たい水へと飛び込む準備を整える。


主要人物

項充(こうじゅう)

  • 綽名:八臂那
  • 所属・役割:梁山泊。水陸両用部隊の将
  • 初登場:第2巻 第2章 第1節

かつて梁山泊に入り、卓越した操船と上陸戦術を組み合わせた水陸両用部隊を鍛え上げた。かつての親友を失った深い喪失感を抱き続けているが、兵士には覚悟ではなく「納得」させて腹をくくらせるという指導哲学を持つ。自らも冷たい水に潜り続けて自己研鑽を怠らない、頑健で実直な叩き上げの武人である。

童猛(どうもう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。水軍の将、兵員輸送担当
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

梁山泊水軍の幹部であり、大型船を操って新兵を洞庭山へ運ぶ海上輸送任務を担う。太湖の水域や船着場に密かに戦死した仲間の名を付け、水底を覗き込んでは自分より優れていた亡き兄の面影を探す繊細な内面を持つ。自分の行動を不器用と感じつつも、項充に対して深い共感と信頼を寄せている。

杜興(とこう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。洞宮山拠点の責任者、新兵の見極め・執事役
  • 初登場:第1巻 第3章 第3節

かつて独竜岡の李家荘で執事を務めた実務家。洞宮山にある十二の村を取り仕切り、急速に膨れ上がる新兵たちの受け入れや適性の判定、青蓮寺の工作員に対する防諜の目を光らせている。加齢を感じつつも裏方の重責を担い、項充の語る「納得させる兵教育」に深い関心を示す。

扈三娘(こさんじょう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。洞宮山での新兵調練担当
  • 初登場:第1巻 第3章 第3節

かつて梁山泊の女性豪傑として活躍した戦士。子供を育てながら、洞宮山で新兵たちへの武芸指導や基礎教育を行っている。家庭的な温かさと厳しい武芸指導者の双方の顔を持ち、北方の楊令や仲間たちの動向にも気を配っている。

顧大嫂(こだいそう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。洞宮山での新兵調練・給食担当
  • 初登場:第1巻 第1章 第2節

かつて梁山泊で異彩を放った豪快な女性戦士。洞宮山では新兵たちに槍や戟の厳しい稽古をつける傍ら、得意の料理(名物の焼饅頭など)を振る舞って母親のように親しまれている。酒を嗜みながら仲間が減った悲哀を語るなど、情に厚い気風の良さを持つ。

公孫勝(こうそんしょう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。致死軍頭領、防諜・裏工作担当
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

梁山泊の最高幹部であり、影の工作部隊「致死軍」を率いる道士。新兵の中に紛れ込んだ敵(青蓮寺)の隠密を密かに排除するなど、冷徹かつ完璧な防諜活動を遂行する。致死軍の再編と補充のため、過酷な情勢が続く北方へと足を運ぶ。

宣賛(せんさん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。洞庭山拠点の総務・人事・調整役
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

顔に覆面をあて、洞庭山で六千人に達した軍勢の書類処理や人員配置を一手に引き受ける実務家。項充が抱く将校への複雑な感情や葛藤を即座に見抜く鋭い観察眼を持ち、私情を排して任務に邁進するよう厳しくも温かく導く。

張敬(ちょうけい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。水陸両用部隊の潜水隊指揮官
  • 初登場:第2巻 第2章 第5節

伝説的な水軍頭領・張順の甥であり、叔父譲りの類稀な潜水技術を持つ若き武人。寒冷な水にも怯まず裸で水に飛び込み、竹筒を用いた長期潜水などの高度な水戦技術を兵士たちに伝授しようと熱心に取り組んでいる。

登場人物の関係

graph LR
    項充 ---|同志| 童猛
    項充 ---|同志| 杜興
    項充 ---|同志| 宣賛
    項充 -->|指導| 張敬
    杜興 ---|同志| 扈三娘
    杜興 ---|同志| 顧大嫂
    宣賛 ---|同志| 杜興
    公孫勝 ---|同志| 宣賛

地名・拠点

地名種別解説
洞宮山山・拠点温州より南の湾奥に位置し、十二の村(荘)からなる新兵の受け入れと初期調練の隠れ拠点
洞庭山山・拠点太湖の中に位置し、全国から集まった兵士が本格的な軍装と調練を受ける梁山泊軍の大拠点
金嘴灘船着場童猛が洞宮山近郊の湾の船着場に対して独自に命名した場所

用語リスト

用語読み解説
致死軍ちしぐん公孫勝が率いる、諜報・防諜・暗殺などの影の暗闘を専門とする梁山泊の最精鋭組織
水陸両用部隊すいりくりょうようぶたい項充が率い、軽快な操船から迅速な陸上戦、さらには竹筒を使った潜水攻撃までこなす精鋭部隊

歴史・文化背景

梁山泊軍は敗戦後の再起にあたり、新兵を直接本拠地(洞庭山)に入れるのではなく、外部の隠れ拠点(洞宮山)で数ヶ月間かけ厳重な身元確認と初期訓練を施した上で移送する、二段構えの慎重な組織防衛体制をしいている。青蓮寺などの隠密工作員が侵入する脅威に常に晒される中、隠密部隊(致死軍)による防諜と、十人組による相互監視システムが運用されている。


Human in the Loop

水底マニアの項充は、自分でも変じゃないかと思ったりするらしい。
宣賛と項充のやり取りでは、なぜか宣賛は項充が呼延灼を嫌っていることを鋭く見抜く。

→ 次の節(第2巻 第3章 第1節)

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