第4節 - 花飛麟

第1巻 第6章 第4節

この節の概要

秦容は胸の酷い傷が膿んで高熱にうなされるが、母である公淑の不眠不休の看病と、凄絶な荒治療によって一命を取り留める。花飛麟は二人を護衛しつつ、馬麟から指示された地図を頼りに、長安の北に位置する子午山へと旅を続ける。目的地には、かつて多くの梁山泊の英傑たちを鍛え上げた王進が、老いた母親や少年の張平とともに畑を耕しながら静かに隠棲していた。花飛麟は二人を無事に送り届けるという役目を果たすが、預かっていた馬麟の手紙から、自分が実戦に出るには「弱すぎる」ためにこの地に残される予定であることを知る。納得のいかない花飛麟は、王進の弟子である張平に本気の立ち合いを挑むが、自身がはるか及ばない圧倒的な実力の差を突きつけられ、激しい衝撃を受けることになる。


主要人物

花飛麟(かひりん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。公淑と秦容の護衛・案内役、および自身の成長
  • 初登場:第1巻 第3章 第1節

梁山泊の英傑・花栄の息子であり、素性を隠して育った。幼少期より山中で母と暮らし、父のような一流の武人になるべく、野生の熊や虎と闘うなど過酷な自己鍛錬を重ねてきた。それゆえ武芸の自負が極めて強く血気盛んだが、人との実戦経験や対戦稽古が乏しく、自分の本当の力量を客観的に把握できていなかった。馬麟の手紙に「弱すぎる」と書かれているのを見て激しく反発する。主要な人間関係:花栄(父)、馬麟(尊敬する相手)、秦容(気遣う相手)。

秦容(しんよう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:子午山へ送り届けられる遺児
  • 初登場:第1巻 第5章 第1節

かつての梁山泊の英傑・秦明の息子。道中で負った重傷が膿み、生死の境をさまようが、強靭な生命力と母の治療により奇跡的に回復する。若くして過酷な運命に耐え抜く強さを持っており、熱病の最中には「男なら耐え抜け」と語りかける父親の夢を見ている。主要な人間関係:公淑(母)、花飛麟(尊敬する相手)。

公淑(こうしゅく)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:秦容の母親であり、旅の同行者
  • 初登場:第1巻 第5章 第1節

梁山泊の英傑・秦明の妻。杭州から息子を連れて遥かな旅をしてきた。旅の初期は心身の疲労を見せていたが、息子が負傷してからは母としての計り知れない覚悟と献身を発揮する。秦容の傷口から直接口で膿を吸い出し、赤く焼いた剣先を当てるという、凄絶な治療を不眠不休で行う。主要な人間関係:秦容(息子)、花飛麟(信頼する相手)。

王進(おうしん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:子午山での隠棲者、若者たちの指導者
  • 初登場:第1巻 第6章 第4節

京兆府の北に位置する子午山で暮らす、底知れない風格を持った武術の達人。かつて馬麟や楊令などの梁山泊の面々が彼のもとに滞留し、武術や生き方を学んでいった。普段は泥にまみれて畑を耕しているが、着替えると年齢に相応しい威厳を漂わせ、その眼差しは一瞥で血気盛んな花飛麟を気圧するほどの力を持つ。主要な人間関係:馬麟(信頼を寄せる相手)、張平(弟子)。

張平(ちょうへい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:王進の弟子・協力者、花飛麟に未熟さを自覚させる存在
  • 初登場:第1巻 第6章 第4節

子午山で王進やその母親を助け、農作業や焼き物、台所の手伝いをして暮らす素朴な少年。しかし武術の腕前は極めて高く、王進との厳しい稽古によって超一流の実力を磨き上げている。謙虚で細やかな気配りができ、泥だらけの手で畑仕事に勤しむ。主要な人間関係:楊令(兄と慕う相手)、王進(師)、王進の母(世話をする相手)。

登場人物の関係

graph LR
  公淑 ---|母子| 秦容
  王進 -->|師弟| 張平
  張平 -->|友| 花飛麟
  公淑 -->|信頼| 花飛麟

地名・拠点

地名種別解説
京兆府都市長安とも呼ばれる、子午山への旅の起点となる都市
子午山山京兆府(長安)の北、四百里(約二百キロ)に位置する険しい山。王進、その母親、張平が隠棲し、耕作や焼き物をしながら自給自足の生活を送っている
寿州都市馬麟からの手紙と子午山の地図が届けられた場所。ここで杜興から花飛麟に地図が手渡された

用語リスト

用語読み解説
替天行道たいてんぎょうどう天に替わりて道を行う、という梁山泊の根本思想。花飛麟は亡き父・花栄が遺したこの思想を何年も前から暗記し、心の拠り所として生きている

歴史・文化背景

官軍による梁山泊の追滅作戦の後、生き残った英傑やその遺児たちは、各地で身を隠しながら再起の機会をうかがっている。子午山の王進のもとは、そうした傷ついた志士たちを匿い、鍛え直す精神的なゆりかごのような機能を果たしている。かつて九紋竜史進の師であった王進が、この楊令伝においては楊令をも子午山で鍛え上げていたことが語られ、水滸伝の伝統が次世代へと脈々と受け継がれていることを示す重要な描写となっている。


Human in the Loop

この節では、秦容、公淑、花飛麟によるサバイバル復活劇を堪能できる。そして彼らの行きつく先は、これまでに何度目にしただろう、ジェダイマスターの住む、あの場所である。そこで張平はダークサイドから復活していた。花飛麟の変わりっぷりが楽しみである。闇が深いだけに、戻り幅も大きいのではなかろうか?

→ 次の節(第1巻 第7章 第1節)

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