第1節 - 童猛

第1巻 第6章 第1節

この節の概要

太湖の洞庭山に梁山泊の残党たちが集まり始め、役所の厳しい調べを避けながら秘密裏に新たな寨の建設を進めている。水軍の再建を目指す童猛は、漁師を装って湖底の水深を測り直し、完璧な地図を作成することに没頭している。その孤独な作業の中で、彼は亡き双子の兄・童威を始め、物故した梁山泊の同志たちの存在を湖の各水域に感じ、精神的な対話を重ねていく。一方、建設現場では造船用の木材調達や船底の防腐処理、さらには養生所の建設といった実務が、確かな技術を持つ若い世代の手によって着実に進められている。夜、童猛の幕舎には同じく梁山泊の生き残りである狄成が訪れ、二人は酒を酌み交わしながら、かつての思い出や沙門島での海戦について語り合う。


主要人物

童猛(どうもう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。太湖の水深を測り、湖底の地図を作成する
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

かつて梁山泊に所属していた水軍の将である。祝家荘の戦いで双子の兄である童威を失い、自分だけが生き残ったことに不思議な感覚を抱きながら生きている。実直な性格であり、水深測定を通じて亡き仲間たちの魂と静かに対話する日々を送る。戦いによる別れの辛さを身に染みて知っているため、これから死んでいくかもしれない若い世代の同志たちとは、あえて深く親しくなりすぎないよう一線を引いている。主要な人間関係:李俊(兄貴分)、童威(亡き双子の兄)、狄成(慕われる相手)。

狄成(てきせい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。兵糧の運び込みや、斬り込み隊の鍛錬を担当する
  • 初登場:第1巻 第3章 第2節

梁山泊に加わる前からの童猛らの知り合いで、かつては江南でかなう者がいないと言われたほどの腕達者である。体躯が大きく、右手で剣、左手で戟を同時に操る独自の高い武芸を誇る。豪快で暴れ者として恐れられる一面もあるが、李俊や童猛といった兄貴分には絶対の敬意を払う実直さを持つ。寂しがり屋な一面もあり、酒が入ると亡くなった仲間たちの名を挙げては大泣きする情に厚い人物である。主要な人間関係:李俊(兄貴分)、童猛(兄貴分)、費保・倪雲(兄貴分)。

趙林(ちょうりん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。快速舟「疾風」を操り、連絡や物資調達に従事する
  • 初登場:第1巻 第2章 第3節

太湖の洞庭山で活動する、梁山泊の若い世代の同志である。物資の巡回や連絡役として精力的に活動しており、童猛から仲間たちの食料となる魚を買い取るなど実務を支える。船の操縦技術はまだ発展途上であり、童猛から竿の遣い方について厳しい指摘を受ける場面もある。主要な人間関係:童猛(先輩)、高平・劉策(同志)。

高平(こうへい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。造船や船体の防腐処理仕事に従事する鍛冶屋
  • 初登場:第1巻 第6章 第1節

鍛冶の優れた技術を持つ、体格の良い若者である。梁山泊の優れた鍛冶師であった湯隆の一番弟子として、その技術を確かに受け継いでいる。現在は石炭を蒸し焼きにして船底の防水・防腐に用いる黒い汁を作るなど、水軍再建の基盤となる重要技術を担っている。主要な人間関係:湯隆(師)、劉策・趙林(同志)。

劉策(りゅうさく)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。新たな寨の建物(養生所など)の建設に従事する大工
  • 初登場:第1巻 第6章 第1節

木工の優れた技術を持つ、体格の良い若者である。梁山泊の高名な大工であった李雲の一番弟子として、建物の建築をリードしている。現在は文祥や馬雲、宣賛らの指図を受け、天井が高く風通しの良い養生所と薬方所の建設に励んでいる。主要な人間関係:李雲(師)、高平・趙林・宣賛(同志)。

登場人物の関係

graph LR
    狄成 -->|信頼| 童猛
    趙林 -->|信頼| 童猛
    高平 ---|同志| 劉策
    趙林 ---|同志| 高平
    趙林 ---|同志| 劉策
    童猛 ---|同志| 高平
    童猛 ---|同志| 劉策

地名・拠点

地名種別解説
太湖湖江南に位置する広大な湖であり、梁山泊の残党たちが役所の目を逃れて再起を図るための主要な潜伏拠点となっている
洞庭山山太湖に浮かぶ山であり、梁山泊の新たな寨が建設されている中心地である。外からは見えないよう岩山と森の間に営舎や養生所が建てられており、すでに七百人を超える人員が集結している
洞宮山山太湖よりさらに南に位置する潜伏拠点である。現在は六百ほどの兵が潜伏しており、将来的には三千規模まで増強する計画が進められている

用語リスト

用語読み解説
疾風しっぷう後部に二挺の櫓と帆柱を備えた三人乗りの快速舟である。帆を張って押し走りになると驚くほどの速度を発揮する
阮家の鍋げんかのなべ魚の肝を溶かし込んだ、太湖の大きな魚を用いた豪快な大鍋料理である。過酷な労働に励み、身体から水分や塩分を消耗する若い同志たちの体力を支える貴重な食事となっている

歴史・文化背景

本作の舞台である北宋末期の江南地方は、豊かな水網地帯(河川や湖沼)を背景とした水運と商業が極めて発達していた。官軍の追及を逃れる梁山泊の残党にとって、この複雑な水路を持つ太湖周辺は格好の隠れ蓑であり、同時に軍事・物流の再構築に最適な土地であった。また、作中で若者たちが従事している「石炭を蒸し焼きにして大量の黒い汁を抽出し、船底に塗って防水・防腐を図る」という描写は、当時の造船技術がいかに合理的で実用的な智恵に満ちていたかを示す興味深い歴史的背景を物語っている。


Human in the Loop

水深測定マニア、童猛。湖の水深を人と思いながら計量するという変態っぷりだ。 次世代の船造りを担う若者、趙林。 腕利きの鍛冶屋である湯隆の一番弟子、高平。 大工職人である李雲の一番弟子、劉策。 梁山泊軍を陰で支える一級の職人たちだ。

→ 次の節(第1巻 第6章 第2節)

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