第2節 - 李俊

第1巻 第5章 第2節

この節の概要

李俊は、軍師の呉用や宣賛からの検討要請を受け、太湖における梁山泊軍の新たな拠点づくりについて上青と議論を交わしている。上青の推薦に基づき、太湖の中央に位置する洞庭山を実地調査した李俊は、そこにかつての二竜山のような水上の強固な寨を築く構想を思い描き始める。その後、李俊は沙門島へと渡り、各地から集まった梁山泊の主要な将たちとともに呉用が主導する軍議に参加する。呉用は宋の残党狩りに対抗するため、太湖の洞庭山に新たな寨を建設し、各地の散兵を組織化して反転攻勢に備えるという具体的な再編計画を提示する。本拠の選定と人員・物資の再編をめぐり、長引く逃亡生活に不満を募らせる将たちの間で緊迫した議論が繰り広げられる。


主要人物

李俊(りしゅん)

  • 綽名:混江龍
  • 所属・役割:梁山泊。水軍を率いる首領
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

水軍を率い、広範な海域で交易や物資輸送を担う実力者である。梁山泊の敗戦に強い責任感を抱いており、再起のために新たな本拠地を築く重責を背負っている。頭脳だけで物事を動かそうとする呉用に反発を感じつつも、組織の再建には彼の知略が必要であると冷徹に割り切っている。水上の二竜山のような、傷ついた者でも共に働ける温かみのある寨の実現を思い描く。主要な人間関係:上青(弟分)、童猛(相棒)、狄成(後輩)、呉用(軍師)、蔣敬(同志)。

上青(じょうせい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。太湖の秘密拠点「楡柳荘」を預かる将
  • 初登場:第1巻 第2章 第3節

太湖に長く身を置き、周囲の地形や水深を熟知している。李俊に対してはかつての掲陽鎮以来の深い敬愛を抱いており、からかうような態度を見せつつも絶対の信頼を寄せている。洞庭山の地勢を李俊に提示し、大型船の航路などの重要情報を提供する。主要な人間関係:李俊(首領)。

童猛(どうもう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。湖底の調査や水路の測定を担う水軍の将
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

水深や潮流に対する並外れた感覚と執念を持つ。太湖の湖底地図を独力で描き上げるほどの技能を持ち、闇夜でも標なしで船を導くことができる。常に李俊の傍らでその活動を静かに支え、水路の確保に全力を尽くす。主要な人間関係:李俊(兄貴分)、上青(同志)。

狄成(てきせい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。斬りこみ部隊の調練と操船を担う水軍の将
  • 初登場:第1巻 第3章 第2節

李俊を「大兄貴」と慕い、直情的なながらも果敢に戦う。沙門島から楡柳荘へと戻り、水軍の調練に励んでいる。洞庭山の地形や、武器の隠匿に適した洞穴の存在などを熱心に李俊に報告する。主要な人間関係:李俊(首領)、費保(兄貴分)。

呉用(ごよう)

  • 綽名:智多星
  • 所属・役割:梁山泊。軍の再建を指揮する軍師
  • 初登場:第1巻 第1章 第1節

聚義庁の崩壊から生き延び、各地に散った残党に指示を送り続ける地下組織の頭脳である。以前よりも高飛車で傲慢な態度が目立ち、他の将たちから反発を買っている。しかし、精密な計画力と兵站の管理能力は健在であり、宋軍の残党狩りから生き残るための冷徹な寨建設計画を断行しようとする。主要な人間関係:李俊(依頼相手)、宣賛(相棒)、蔣敬(対立する同志)。

蔣敬(しょうけい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。兵站や資金の調達を担う古参の将
  • 初登場:第1巻 第5章 第2節

梁山泊の初期から勘定や計数を担当してきた知性派である。孟康とともに北での商いの道を整備するために多大な苦労を重ねてきた。呉用の傲慢な態度や実戦を顧みない物言いに強い不満を抱いており、会議では真っ向から彼に反論する気骨を持つ。主要な人間関係:呉用(対立する軍師)、李俊(同志)。

張清(ちょうせい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。北方の遊撃部隊を束ねる将
  • 初登場:第1巻 第2章 第3節

卓越した武芸と人望を誇り、現在は移動を続ける呼延灼や史進の部隊の実質的な統括を任されている。会議では、呉用への不満を募らせる蔣敬をいさめつつ、すでに自分たちの部隊は残党狩りから逃げずに対抗する準備ができていることを示す。主要な人間関係:呼延灼・史進(指揮を委ねられている部隊の将)、瓊英(妻)。

登場人物の関係

graph LR
    呉用 -->|主従| 李俊
    呉用 -->|主従| 宣賛
    呉用 -->|対立| 蔣敬
    李俊 ---|同志| 上青
    李俊 ---|同志| 童猛
    李俊 -->|主従| 狄成
    李俊 ---|同志| 蔣敬
    張清 ---|同志| 蔣敬

地名・拠点

地名種別解説
太湖湖長江下流の南に位置する広大な湖。宋軍の監視を避けながら大規模な水軍の拠点を築くのに適した地勢を持つ
楡柳荘拠点太湖のほとりに建つ上青の屋敷。資材の運び込みなど、新たな寨建設の兵站拠点として機能する
洞庭山島太湖のほぼ中央に位置する広大な島。大型船の水路が1本、中型船の水路が3本あり、周囲は浅い水域に守られている。かつての梁山泊の2倍ほどの広さがあり、李俊が水上の二竜山のような寨を築く構想を抱く目的地
沙門島島登州に近い、暗礁に囲まれた梁山泊水軍の北方拠点。完璧な船隠しを備え、呉用や宣賛が滞在して各地の将と重要な会議を行う場所
洞宮山山太湖の南に位置し、陶宗旺が開発した十二の秘密の荘がある地域。ここで一万の新たな兵力を鍛え上げ、洞庭山の寨に収容する計画が進められている

用語リスト

用語読み解説
二竜山にりゅうざんかつて秦明が心血を注いで建設に携わった、梁山泊の出城としての要塞。李俊は洞庭山に、傷ついた者でも共に働ける、この二竜山のような寨の再現を夢見る
船隠しふねかくし宋軍の監視から船を隠すための精巧な港湾施設。沙門島には大型船3艘、中型船7艘を完璧に隠匿できる施設が存在する

歴史・文化背景

本作では、梁山泊の敗戦後における非正規軍のゲリラ的組織再編と、高度な兵站維持の苦闘が描かれている。物理的な拠点を失った梁山泊が、宋朝の「残党狩り」に対抗するため、合法的な農村(洞宮山)に兵力を分散・潜伏させつつ、最終的には水上の要塞(洞庭山)に一万の軍勢を集結させるという、緻密な多段階のゲリラ戦略を構築している。また、国家(宋)の持つ三十万、四十万という圧倒的な物量と禁軍の精強さに対し、限られた一万数千の兵力と各地の商業ネットワーク(塩の道、日本交易など)から得られる資金のみで立ち向かわねばならない、非対称戦闘の過酷な現実が背景に横たわっている。


Human in the Loop

太湖の洞庭山が梁山泊軍の本拠地になる事が決まった。その場合には水軍が重要となり、李俊もついに日の目を見る事ができるようになるのか。

そして、またしても呉用絡みのトラブルが発生する。今回歯向かったのは蔣敬、計算が得意で兵站の資金を商いで捻出してきた人材だ。呉用の言葉の節々から、器の小ささが垣間見れるのだが、ここに組織運営のヒントがあるように思う。

呉用は、優秀だ。優秀だが、人の気持ちを汲めない、些細なことにこだわる、大らかさがない欠点がある。呉用本人も分かっているが、直せるようなものではない。優秀なだけでは、集団の長には立てない。些細なことにこだわる様子を見て、部下から陰で嗤われているのだ。そんな集団で国を転覆させるなど、論外であろう。

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