第1節 - 孫二娘

第1巻 第3章 第1節

この節の概要

孫二娘は顧大嫂とともに、宋軍や青蓮寺による過酷な残党狩りを避けるため、山間に築かれた秘密の農村(荘)に身を隠している。この荘は、いずれ集結する同志を収容して一大兵力を整えるため、事前に計画・整備された自給自足の拠点であった。ある日、荘の自警能力と将来の兵力を強化する目的で、百二十名もの新兵が村へと送り込まれてくる。新兵を連れてきた義足の将・馬麟の立ち会いのもと、兵たちの実力を測り鍛え上げるための厳しい調練が開始される。その新兵たちの中に、かつての梁山泊の英雄・花栄の息子である花飛麟の姿があり、顧大嫂は並外れた武才を漂わせる彼と棒術での手合わせを試みる。


主要人物

孫二娘(そんじじょう)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。秘密の荘の統轄、および揚州近辺の商いによる利を上げる役割
  • 初登場:第1巻 第1章 第2節

かつて梁山泊の活動家として動き、元の亭主である張青を失っている。現在は顧大嫂とともにのどかな棚田の広がる村に身を隠しつつ、青蓮寺の執拗な残党狩りから生き延びる手段を模索している。村の穏やかな生活に完全には馴染めずにおり、張青に似た面影を持つやさ男の若者に思わず惹かれてしまうような人間らしい一面を残している。主要な人間関係:顧大嫂(同志)、馬麟(同志)。

顧大嫂(こだいそう)

  • 綽名:母大虫
  • 所属・役割:梁山泊。村における女性の統轄、および兵を鍛える役割
  • 初登場:第1巻 第1章 第2節

どのような場所にもすぐに馴染む大らかな性格の持ち主であり、十二の秘密の村の女性たちを束ねている。棒、槍、戟のいずれを遣わせても並外れた腕前を持つ優れた武芸者であり、馬上での戦闘技術にも長けている。強いものや美しいものを手合わせによって突き崩そうとする特異な衝動を秘めており、厳しい調練を通じて弱兵を徹底的に鍛え直すことに情熱を注ぐ。主要な人間関係:孫二娘(同志)、花飛麟(手合わせをした若者)、馬麟(同志)。

馬麟(ばりん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。新兵百二十名の引き連れと調練の指導
  • 初登場:第1巻 第3章 第1節

かつての戦いで右脚を失い、木製の義足をあてがっているが、今なお馬を見事に乗りこなす技量を維持している。物腰はどこか冷ややかに見えるが、指導者としての確かな観察眼と冷静さを備えている。花飛麟が持つ非凡な強さと、他者との交わりを不得手として実戦で突出しがちな危うさを正確に見抜いており、その扱いを顧大嫂たちに託す。主要な人間関係:顧大嫂・孫二娘(同志)、花飛麟(危惧する若者)。

花飛麟(かひりん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:梁山泊。新たに村へ入った志願兵
  • 初登場:第1巻 第3章 第1節

梁山泊の伝説的な英雄・花栄の息子であり、父の死後に入山を希望した。端正な顔立ちをしながらも、幼少期の厳しい修行と山中での孤独な自己鍛錬によって、剣、弓、棒術のいずれも極めて高い領域に達している。しかし、他者との交わりが不得手であり、実戦調練では功を焦って突出してしまいがちな危うさを秘めている。主要な人間関係:顧大嫂(対峙した相手)、馬麟(上官)。

登場人物の関係

graph LR
    孫二娘 ---|同志| 顧大嫂
    孫二娘 ---|同志| 馬麟
    顧大嫂 ---|同志| 馬麟
    顧大嫂 -->|師弟| 花飛麟
    馬麟 -->|同志| 花飛麟

地名・拠点

地名種別解説
洞宮山山太湖の南に位置する山。陶宗旺が中心となって、この地を中心に十二の秘密の村を築いた
揚州都市顧大嫂の店があった場所であり、長江近くでの商いによる利をこの秘密の村に注ぎ込むための拠点となっていた

用語リスト

用語読み解説
荘そう陶宗旺が開発した十二の秘密の村が一体となった、大きな農村共同体。自警団を組織して私兵化を進めつつ、役人には怪しまれないよう適度に納税や賄賂を納めてカムフラージュしている

歴史・文化背景

北宋末期における皇帝の度を越した奢侈と、それが民衆に与えた過酷な負担が描かれている。朝廷が「空の青さのような磁器」を求めて全国から厖大な土を運び込み、数千人の陶工を徴発して試作を繰り返させ、少しでも気に入らなければ打ち砕くという退廃的なエピソードが登場する。こうした民を省みない重税と徴発による疲弊が、梁山泊のような叛乱組織が容易に民の支持(『替天行道』の大義)を得て巨大化する社会的土壌を作り上げていた。


Human in the Loop

気の毒に思えるほど、安定した呉用の嫌われぶりである。梁山泊軍が負けることまで想定し、準備していたのは呉用だった。無茶な指示を出す一方で、寝る間を削り梁山泊軍のありようを考えていたのも、呉用だった。晁蓋、宋江無き今、序列から言えば呉用が梁山泊軍のトップとなるが、誰もそれを認めていない。いや、公孫勝は認めているだろうか。

意外にも馬麟は男前らしく、張青と裴宣を失った孫二娘は、今度は馬麟に目を付けたのか。

そして、あの花栄の息子の花飛麟である。すでに、顧大嫂よりもはるかに強い。強いが、ダークサイドに足を踏み入れかかっているのか。

→ 次の節(第1巻 第3章 第2節)

💡 しおりをセットすると、登場人物ページやホバーポップアップのネタバレ表示が制御されます。読んだ範囲の情報のみが表示されます。