第2節 - 李富

第1巻 第2章 第2節

この節の概要

青蓮寺の統括者となった李富は、蔡京から独立して帝の直属へと組織の形を変え、李師師の妓館を新たな情報拠点としている。梁山泊がかつて蓄えた銀の行方を追っていた部下の陸謙は、すでに三ヶ月も前に梁山湖の底からすべて引き揚げられたという結論を報告する。すでに手遅れとなった銀の探索に区切りをつけた李富は、陸謙に対し、未だに生死が定かではない楊令の捜索に切り替えるよう命じる。一方で陸謙は、度重なる叛乱によって国が乱れ、外敵につけ入られることを懸念し、梁山泊残党の早期処断を強く主張する。李富は陸謙の進言を退けつつも、知りすぎた上に自らの権限を越えて発言し始めた彼の存在に危険を感じる。そして李富は、腹心の護衛である周炳に対し、今夜中に陸謙を処分するよう密かに命じる。


主要人物

李富(りふ)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:宋の諜報組織「青蓮寺」の統括者
  • 初登場:第1巻 第2章 第2節

かつての統括者・袁明の跡を継ぎ、青蓮寺を蔡京の直属から実質的な帝の直属組織へと変革させた。白髪となり声も嗄れているが、市井に紛れて民情を探る行動力を維持している。楊令が生きていることを確信しており、組織に刃向かいかねない「知りすぎた部下」を容赦なく抹殺する冷徹さを持つ。主要な人間関係:陸謙(部下)、周炳(腹心)、楊令(宿敵)。

陸謙(りくけん)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:青蓮寺の幹部であり、情報探索を担う将
  • 初登場:第1巻 第2章 第2節

梁山泊の蓄えていた銀の行方を粘り強く追跡し、それが梁山湖の湖底から引き揚げられた事実を突き止める。国家が叛乱によって疲弊し、外敵に侵入されることを深く危惧しており、梁山泊残党の早期処断と撲滅を主張する。しかし、その有能さと憂国の志ゆえに組織内で発言力を強め、李富の権限を脅かす領域にまで踏み込みつつある。主要な人間関係:李富(上官)。

周炳(しゅうへい)

  • 綽名:なし
  • 所属・役割:李富の直属護衛を率いる二十名の長
  • 初登場:第1巻 第2章 第2節

二十三歳という若さながら、李富の身辺を警護する寡黙な武人である。かつて青蓮寺の手の者であった両親を、梁山泊(致死軍)との戦いで殺害されており、高廉によって育てられた過去を持つ。復讐の怨念を内に秘め、感情を表に出さず、命じられた暗殺任務を迷いなく執行する。主要な人間関係:李富(主君)、高廉(恩人)。

登場人物の関係

graph LR
    李富 -->|主従| 陸謙
    李富 -->|主従| 周炳
    周炳 -->|信頼| 李富

地名・拠点

地名種別解説
太平興国寺寺院青蓮寺の本拠が置かれている境内
開封府都市宋の都。李師師が経営する妓館があり、青蓮寺のもう一つの情報統轄拠点として機能している
北京大名府都市聞煥章が滞在し、北方の情勢を監視している拠点
梁山湖湖かつて梁山泊の砦があった湖。底に銀が沈められていたが、すでに梁山泊軍によって引き揚げられている
相国寺寺院月五回の市が開かれる寺。民情の変化を捉えるため、李富がしばしば老人の姿で変装して訪れる

用語リスト

用語読み解説
青蓮寺せいれんじ宋の国家秩序を守るために暗躍する、強力な非公式の諜報・工作組織
致死軍ちしぐんかつて両親を殺された周炳が深く憎悪する、梁山泊の極秘裏の工作・暗殺部隊

歴史・文化背景

北宋末期の政治的・社会的退廃と国境の危機の高まりが描写されている。国内では度重なる重税を原因とする反乱が各地で頻発しており、地方軍がこれを鎮圧しているものの根本的な解決には至っていない。その一方で、北方では新興国家「金」が建国され、遼の衰退に伴って国境緊張が極度に高まっている。さらに、都の開封府では皇帝の贅沢が深刻化し、自衛を固めようとする宰相蔡京と、事態を安易に報告する廷臣たちの間の乖離、そして非公式組織である青蓮寺が帝の直属として独自の権力を握るという異常な政治体制が生まれている。


Human in the Loop

あえて梁山泊軍をクーデター軍と呼ぶならば、青蓮寺はCAIである。規模を縮小したものの、軍、政府と同じ権力を持つまでになった青蓮寺。この節では、さらに非情となった青蓮寺のトップである李富を知ることができる。

そして青蓮寺にも、両親を梁山泊に殺され怨念を持つ次世代が登場する。

→ 次の節(第1巻 第2章 第3節)

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